先日各務原市桜まつりのプラレール運転会へ参加してきましたが、その折にご縁あってこのようなものをお迎えする機会を頂いてしまいました↓
「プラレールのすべて」にも掲載されていた中国限定プラレールの1つ「力獅号(リーシーハオ)」です。同書によると1997年に中国での販売のために現地で生産していた製品との事[1]。この本によりかなり前から存在だけは知っていたのですが、まさかこんな手元で拝める日が来るとは思っていもいませんでした。
中国での商品名は陪樂兒(péi lè ér)[2]で、カタカナにするとペイラーアールが一番近いでしょうか。「子供といっしょに楽しく」という意味[3]だそうなので「プラレール」に当て字をしつつもキャッチコピーを兼ねている点にセンスを感じます。
生産:東莞廣達塑膠製品有限公司
あれ?販売元がトミーじゃない?
そうです、トミーではない別の企業の名前が書かれているのです。
箱の左側の注意書きにも同じ社名が書かれていました。社名と住所にある東莞(とうかん・ドングァン)市は広東省にある都市で、香港から近いため輸出製品に関連する軽工業が盛んと言われています。
それならこの会社も実は香港に本社を構えているのでは、と思い右端のロゴなどを手掛かりに調査を進めた結果、生産者である廣達(クォリダクス)社の公式サイトを発見。やはり親会社は香港にあり、しかも今でも営業しているようです。簡体字を使う中国本土で販売していた割になぜかパッケージが全て繁体字で書かれていた事にずっと違和感があったのですが、大元が繁体字を使う香港にあるという事であれば納得がいきますね。
さらにこの会社、OEM事業として試作品から型製作・製造・品質検査まで一貫して生産受託を行うことができるそうで、以前からトミー製品の仕事を請け負っていた可能性が考えられます。製造委託自体は決して珍しい話ではなく、特に製造受託会社の多い香港では他にもケーダー社(Kader Industrial Company Limited)がTOMIXの前身であるトミーナインスケールの製造委託を受けていた事例もありました[4]。
なお販売者である東莞煌金樹貿易社も企業ポータルサイトに掲載されており、日用品や玩具を扱う商社である点までは確認できましたが、こちらは現在も営業しているかは不明です。
ここからは完全に想像の話となってしまうのですが、プラレールを中国で展開するにあたって新しく現地法人を立ち上げるのではなく、現地かつ既にトミーと繋がりのあった企業を経由して製造・販売ともに委託した方が合理的だという判断がなされたのではないでしょうか。中国本土に子会社を持っている会社であれば法律や商慣習の経験も豊富にあるはずなのでなお都合がよかったはずです。
またこの話は以前幣ブログで紹介したイギリス向けプラレールにも繋がっているが可能性あり、当時「台湾製と書いてあるのにトミーが台湾に工場を持っていた記録が見つからない」などと書いていたものの、今回の発見によりそもそもトミーは台湾に工場を持っておらず、現地の玩具メーカーへ再委託していた可能性が浮上しました。同じく西ドイツのシュテルコ社向け製品の一部などにあった香港製の車両もこのパターンなのではないかと今であれば推測できますね。
まだ開けていない開けるのが怖いので車両の写真はこれしかありませんが、この側面の帯が青色の「力獅3号」に加えて紫色の「力獅2号」、セット品で国鉄色の「力獅1号」の全3種類の構成となっているようです。ただこの後の2002年に西日本スペシャルセットで「キハ181系 特急いそかぜ」として日本でもディーゼル特急が再販されているので、それまでに廣達社から金型が返却されてきたのか、それともそもそも廣達社で使うためにもう1つ金型を起こしたのか、気になるところですね。
という事でほぼ箱だけでかなりの文章量となってしまいましたが、個人的には様々な発見があり海外向け製品の歴史研究にかなりの影響を及ぼすと考えています。レールと同じようにどんどんひろがるぼくらのプラレール研究、今年度もまた新たな出会いはあるのでしょうか。
【参考文献】
[1]『プラレールのすべて』ネコ・パブリッシング 1998年
まだ開けていない
という事でほぼ箱だけでかなりの文章量となってしまいましたが、個人的には様々な発見があり海外向け製品の歴史研究にかなりの影響を及ぼすと考えています。レールと同じようにどんどんひろがるぼくらのプラレール研究、今年度もまた新たな出会いはあるのでしょうか。
【参考文献】
[1]『プラレールのすべて』ネコ・パブリッシング 1998年
[2]『白水社中国語辞典』白水社 2002年
[3]『プラレールのすべて』ネコ・パブリッシング 1998年
[4]『TOMIXのすべて』ネコ・パブリッシング 2001年
[4]『TOMIXのすべて』ネコ・パブリッシング 2001年
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